プロジェクトを進めていると、同じ手戻りや連絡漏れが何度も起きることがあります。
原因に気づいている人がいても、話す場がなければ、やり方は変わりません。
ふりかえり(レトロスペクティブ)は、一定の期間ごとにチームで仕事の進め方を見直し、次に変えることを決める場です。
この記事では、ふりかえりの枠組みとしてよく使われる KPT について、書き方、進行の例、形だけにしないための注意点を解説します。
ふりかえりの目的
ふりかえりの対象は、成果物そのものではなく、仕事の進め方です。
コードの品質や仕様の誤りは、レビューやテストで扱います。
ふりかえりでは、たとえば次のような点を話します。
- 作業の分担や、引き継ぎの方法を見直す。
- 会議やチャットでの、情報の伝え方を見直す。
- 見積もりと実績のずれの原因を探る。
- 使っている道具や、手順の手間を減らす。
目的は、誰かの責任を問うことではありません。
「次の期間に、何を1つ変えるか」を決めることがゴールです。
この点をチーム全員が共有していないと、発言が減り、ふりかえりが報告会になってしまいます。
KPTの3つの枠
KPT は、Keep・Problem・Try の頭文字です。
ホワイトボードやオンラインの付箋ツールに3つの枠を作り、参加者が意見を書いていきます。
| 枠 | 書く内容 | 例 |
|---|---|---|
| Keep | うまくいったので、続けること | PRに画面のスクリーンショットを付けたら、レビューが早く終わった |
| Problem | うまくいかなかったこと、困ったこと | 仕様の変更がチャットに散らばり、実装後に気づいた |
| Try | 次の期間に試すこと | 仕様の変更は、課題管理ツールのチケットに必ず書く |
Try は、Keep を伸ばすものと、Problem を解決するものの両方から出します。
Problem だけに注目すると、反省会の雰囲気になりやすいためです。
付箋の書き方
付箋は、あとで読み返しても意味が分かるように、具体的に書きます。
- 1枚に1つの事柄だけを書く。
- 「いつ・何が・どうなったか」を書き、感想だけで終えない。
- 人の名前ではなく、出来事や仕組みについて書く。
たとえば「レビューが遅い」ではなく、「水曜に出したPRが、金曜までレビューされなかった」と書きます。
事実が書かれていれば、原因と対策を話し合いやすくなります。
1時間で終える進行例
2週間ごとに、5人程度のチームでふりかえりをする場合の進行例です。
時間は目安で、チームの人数や期間の長さに合わせて調整します。
| 時間 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 0〜5分 | 前回の Try の結果を確認する | 実施できたか、効果があったかを短く話す |
| 5〜15分 | 各自が Keep と Problem を書く | 話さずに、黙って書く時間にする |
| 15〜30分 | 1人ずつ付箋を読み上げ、似たものをまとめる | この時点では議論せず、質問だけにする |
| 30〜45分 | 話し合う Problem を選び、原因を話す | 投票で2〜3個に絞る |
| 45〜55分 | Try を出し、実施するものを決める | 担当者と期限を決める |
| 55〜60分 | 決めた Try を読み上げて終える | 記録の置き場所も確認する |
最初に前回の Try を確認するのは、決めたことが実行されたかを確かめるためです。
実行されなかった Try は、内容が大きすぎたのか、担当が曖昧だったのかを話し、作り直します。
良い Try と、実行されにくい Try
Try は、次の期間で実行できたかどうかを判断できる形にします。
| 実行されにくい Try | 実行しやすい Try |
|---|---|
| コミュニケーションを良くする | 朝会で、ブロックされている作業を1人ずつ話す |
| レビューを早くする | PRを出したら、チャットのレビュー用チャンネルに投稿する |
| テストを充実させる | 不具合を直すときは、再現するテストを1本追加する |
「良くする」「気をつける」のような言葉は、行動が決まっていないため、実行したかどうかを判断できません。
誰が、いつ、何をするかが読み取れるまで、言葉を具体的にします。
形だけにしないための注意点
ふりかえりは、続けるうちに決まった流れをこなすだけの場になりがちです。
よくある失敗と、その対策を挙げます。
Try が多すぎる
10個の Try を決めても、通常の作業と並行して実行するのは困難です。
1回のふりかえりで決める Try は、1〜3個に絞ります。
残った案は記録に残し、次回以降の候補にします。
Try が記録されず、忘れられる
決めた Try は、課題管理ツールのチケットにするなど、日々の作業と同じ場所に置きます。
議事録だけに残すと、次のふりかえりまで誰も見ないことがあります。
特定の人への批判になる
Problem が個人の行動を指していると、言われた人は身構え、ほかの人も発言を控えるようになります。
「Aさんの確認が漏れた」ではなく、「確認の手順が決まっていなかった」のように、仕組みの問題として扱います。
進行役は、個人を責める発言が出たら、話題を出来事や手順に戻します。
いつも同じ人だけが話す
声の大きい人の意見だけで Try が決まると、ほかの人の困りごとが残ります。
最初に黙って付箋を書く時間を取り、全員の付箋を順番に読み上げると、発言の偏りを減らせます。
進行役を持ち回りにするのも有効です。
Problem が出なくなる
何回か続けると、「特に問題はない」という状態が続くことがあります。
その場合は、Keep を中心に話し、うまくいっている点をほかの作業に広げる Try を考えます。
問いを変えるために、KPT 以外の枠組みを一度試すのも1つの方法です。
まとめ
KPT は、Keep・Problem・Try の3つの枠で、仕事の進め方を見直す方法です。
効果を出すために押さえる点は、次の3つです。
- 付箋には、感想ではなく、具体的な出来事を書く。
- Try は1〜3個に絞り、担当者と期限を決めて、作業と同じ場所で管理する。
- 次のふりかえりの最初に、前回の Try の結果を確認する。
最初の数回は、うまく進まなくても問題ありません。
「ふりかえりの進め方」自体もふりかえりの対象にして、チームに合う形に少しずつ変えていきます。